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りんかく線のコト。

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 昨日のビュフェ鑑賞で思い出した事があったのです。ちょっと書こうと思います。
 昨日の展示は、作家の人生を俯瞰する物でしたので、各種版画なども飾られていましたが、ビュフェさんといえばやはり本領は油彩。
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 油彩の中でもビュフェさんの場合、実はけっこう幅があるんですが、多分一番良く知られているのはリンカク線が太くハッキリした作風では無いでしょうか。
 昨日は原画をこれでもかと言うくらい堪能しましたので、描線の秘密にも、思う存分迫って参りました。そこで分かったのは圧倒的な確信でしょうか。迷いが無いです。そして線のハジッコまでが美しい事。クッキリとしていました。
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 昨日のブログでも書いたんですが、ビュフェさんの絵って、私にとっては好き/嫌いと言う領域を越えた所にあります。しかし考えてみれば、私の絵もリンカクが主な構成要素ですし、何か吸収すべきなのかもしれない、などと遅まきながら気付いたりしました。
 ここからビュフェさんの創作からは離れた話になります。
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 私が”リンカク”と言う物への意識を変えた事件はふたつあります。
 ひとつは専門学校に通っていた頃に先生に言われた「リンカクって凄い物だから力を入れて描きなさい」と言う言葉です。やはり面が凝縮していますから、そこを描くと言う事には注意しなければいけません。単純に力強く描けと言うだけでは無い教えです。
 もうひとつの事件は、働き始めた頃のお話です。グラフィック・デザイナーとして働いていた頃、といってもお手伝い程度の働きで、実際に当時はまだバイト扱いだったんですが、原田治さんの原画を見ました。
原田治さんのイラストのネット検索結果を見ようという方はクリックしてください
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 英会話の教材に添えるイラストでした。簡単に言うとネコが印刷された紙を機械に通すと「CAT」と発音されて発音を学べると言うような商品作りだったと思いますが、仕事自体はそれほど良く覚えてるわけでもないです。
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 今はパソコンでやってしまうんですけど、昔はカミヤキ機と言う物がございまして、これは、人が中に入れる大きなカメラと思ってもらえば良いのですが、これでうまく伝わるか分かりませんね。いまはコピー機の性能も凄く良いですからね。
 まぁとにかくカミヤキ機なんですが、例えば企業のロゴマークなんかの拡大縮小をする際には大活躍の機械でした。
 原田治さんみたいに線が太いポップなイラストは特にそうなんですけど、デザイン処理で着色する時なども、まずはカミヤキ機で大きさを調節していたのです。
 私がデザイナーだった、昭和が終わる手前くらいまでは、そう言った機械を使って印刷デザインに関わる諸業務をこなすのが普通でした。
 けっこうハショって書いているにも関わらず、長くなってしまいました。時代が相当に変わってしまいましたので説明にもひと苦労です。
 カミヤキ機が、巨大なカメラであるという事は上で申し上げた通りなんですが、厚いカーテンを閉めて真っ暗な状態で撮影をします。たいていの場合、ひとりです。
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 つまり原田さんの原画を詳細に見る事が可能な個室空間でした。仕事を進めながらですので、ノンビリ見るという訳にもいきませんでしたが、やはり線が美しい。そして力強い。ムダが無い。かなりホレボレしました。
 あ、そうそう。上で室内を真っ暗にするという事を書きましたが、当然、蛍光灯もあるので明るくする事もできます。それと現像の時に使う赤いランプもあります。暗くするのは感光の時ですね。
 なんだかカミヤキ機の説明にまぎれてしまってイマヒトツ、原田さんの原画を見た時の私の感動がうまく伝わるか、かなり不安です。しかしここで開眼した事はかなり大きくて、私が今まさに描いている線の遠因は間違いなく原田さんの線を見た事に遡れると思います。
 「線はこうじゃなきゃいけない!」と気付いた瞬間であり、同時に「でもこりゃかなり道は遠いぞ…」とも思いました。
 あきらめずに続ければ、絵ってウマくなっていきます。
 それついては私個人のガンバリと言うよりは、根気よく私に仕事を廻して下さった方々への感謝しか無いですが、タネが無いと花も咲かないワケで、そうした私の根っこにあるものが実は日本の有名作家にあると、まぁそう言うお話でした。結果的に全然別の絵を描く私になりましたが、決して原田さんのクローンになろうと思った訳では無いので、そこはまぁオオムネ良いのです。
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 私が見た原田さんの線って、印刷処理に廻す前提の物ですから、それ自体が多くの人の目に触れると言う物ではありません。変な表現になりますが「デザインの方、並びに製版の方、ヨロシク」というようなウチウチの原稿です。でも輝いていましたね。勉強になりました。あれが見れただけでも私のデザイナー時代の修行は得る所があったと思います。