松木カルテットのライブを聴きました。

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甥っ子に頼まれたベイブレードの捜索を続けるうちに時は無情にも過ぎ、そろそろ松木カルテットのライブの時間です。


東京倶楽部』という、ジャズ・ライブ・バーへ向かいます。JRお茶の水と水道橋の駅の中間くらい。線路沿いの南側という、東京の事を多少ご存知の方ですとかなり場所の見当をつけやすい場所にあります。しかしB1Fという性格上、外から中をうかがい知る事は出来ず、ドアを開ける事に若干の躊躇とハラハラ感があります。
開店当初は生演奏を楽しめるお店ではなかったそうですが、元からこんなお店だったのではと思ってしまうほど、バンド演奏が馴染む雰囲気です。普段、ガチャガチャした音楽を聴いている私としては、若干の居心地の悪さがありますが場の流儀に従います。
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(写真のリンクがおかしくなってしまいました。サムネイル画像をクリックしても大きな画像は出て来ません。すみませんが下記のリンクをクリックして下さい。)
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松木カルテットは、ドラマーの松木健郎(たけろう)さんがリーダーを務めるバンドです。
音楽的には、ジャズである事はもちろんなんですが、ブラジルの音楽、すなわちサンバやボサノバも含まれます。
構成は、女性ボーカルの堂園芳子さん、ピアノに尾崎琢也さん、ベースに村井俊夫さん、そしてドラマーの松木健郎(たけろう)さんです。
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松木カルテットの演目は、大きくふたつに分かれていて、楽器演奏のみのインストゥルメンタル曲。そしてボーカルを加えての歌物です。
インストゥルメンタル曲では実験色が濃いと言えるでしょうか。手に汗握る演奏が繰り広げられます。この日の演奏も白熱していました。
歌物の方は、打って変わってリラックスしたムード。これは、ボーカルの堂園さんのキャラクターによる所も大きいです。ニコニコしながら聴ける様な曲。楽器のソロの部分では、またしても聴く人を唸らせる様なテクニックが飛び出すと言った具合です。
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今回は、ピアノと歌だけで『竹田の子守唄』も演奏されました。心に沁みるなかなかの名演だったと思います。ピアノの尾崎さんはピアノを美しく響かせる方で、生のピアノの音を聴く機会が滅多に無い私にとっては貴重なひとときです。
ライブは3セットに分かれていて、全部を聴き通すと、かなりの満足感があります。セットの合間の休憩を利用して、メンバーの皆さんにご挨拶をさせて頂いたりしました。
私が遠方に住んでいる関係で、なかなか足を運べないのですが、また近いうちに、松木カルテットの演奏を聴きたいなと思います。
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以下に、私が知る松木さんの事を少し書こうと思います。
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松木さんは、アルファドラムスクールというドラム教室の講師をなさっています。初心者への手ほどきはもちろんなのですが、モーラー奏法の授業が特色です。モーラー奏法とは片手連打が可能になる奏法です。普通、両手が必要なフレーズが片手で出来てしまうのです。その為、開いた片手で別の事が出来ます。他のドラマーの倍以上のフレーズを叩きたい(?)というドラマー志望の方には良さそうです。
実際に間近でその演奏を見ると、恐ろしく細かくて驚きます。松木さんの場合、両手でそれぞれ別の拍子を叩く事も出来ますので、可能性は更に広いと言えるでしょう。
フットワークについても同様で、ツーバス、あるいはツインペダルが必要なフレーズを片足でこなす事が可能であるようです。それによりもう片方の足が自由になるのは、腕の方の事情と同様ですね。しかし腕以上に繊細な動きが難しい足で連打する姿を見ると、私は素人ですが、とても驚きます。
また、スネアなどの皮物ですと、跳ね返りの力も利用しての連打がやりやすいのですが、ハイハット等の金物の片手連打は、更に高い技術が必要なのだそうです。詳しくは伺いませんでしたが、かなりの練習をされたのではないでしょうか。
ここまで書いて今更ながら、松木さんが相当に器用なプレーヤーだと再認識しました。私はどちらかというとパンクや、テクノと言った、必ずしも楽器の高いレベルでの習得を必要としない音楽を愛する立場にあるのですが、人の縁とは不思議な物です。
それにしても、なんだかテクニックに関した事ばかりになってしまいました。しかし松木さんの場合、音楽への愛情が人一倍強い事もお伝えしたいのです。多岐にわたる音楽知識を持っています。テクニックは、あくまで音楽表現の為にあるという信念を、これまでのお付き合いの中から、幾度となく強く感じています。
もっともこれは今までに松木さんが教わったドラムの先生がまたすばらしい人たちであったという証明なのかも知れません。
実は私が松木さんと出会ったのは、ドラムとは無関係のシンセ・セミナーで同席したのがきっかけです。シンセ界の偉人であるMOOG博士の講演会です。もう6〜7年前になるでしょうか。こんなエピソードからも松木さんの興味の広さが伺えると思います。ドラマーにしては珍しくドラムマシンの音も好きだという松木さん。近年の興味は、生楽器であるドラムと、シンセサイズの融合にあるようです。
全ての表現者にとって当然の欲求と言えると思いますが、松木さんも自分の持つ技と知識の全てを、統合して表現する事を目標とされているのではないかと、私は感じています。
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ついでという訳ではありませんが、ベースの村井俊夫さんの事も、書いておきたいと思います。
私が村井さんの演奏を初めて聴いたのは1年前の松木カルテットのライブでの事ですので、まだ知ったばかりです。しかし演奏はすばらしいです。スリリングな音使いを時に聴かせてくれるプレーヤーだと思います。
なぜ、あんな音使いが出来るのだろうと不思議に思ったのですが、非常によく勉強されているようです。一般にジャズの方は良く勉強し、良く練習する方達だと心得ているので、村井さんに限った事ではないかも知れませんが。
村井さんの、そんな研究の成果の一端を伺い知る事が出来るご著書があります。『ベースラインの構築法』という本です。一見堅苦しい本のようですが、ジャズを起点にしてポピュラー音楽全般へ応用可能な知識を学べる本になっているようです。
私も、自分の趣味として小さな曲を作る際のアイディアの元になればと思い、この本を買ってみました。自分の分かる範囲で何かを学んで、血肉になればと思います。
そして実は、先ほど久しぶりに村井さんのホームページを見て知ったのですが、新刊が出たようです。その名も『作曲非常口』。私の目的も、色んな知識を作曲に役立てたい、という所にあるので、こっちの本を先に買えば良かったかな…。
しかし、村井さんごめんなさい。『ベースライン構築法』の方でもう少し頑張ってから読ませて頂こうと思います。
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まぁ、こういった次第でして、すばらしいミュージシャンとの出会いがある松木カルテットです。私にジャズや音楽の素養が欠けている為、イマイチ本質をズバリと言う事が出来ないのですが、何かの間違いでこのエントリを読まれた方、是非ライブ会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。