トラコイシちゃん〔01〕

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 今日からしばらくのあいだ、当ブログは「歴史ロマン」を追求します。

 「曽我物語(そがものがたり)」にまつわるコトガラです。
 有名な物語であって、素材としてはたくさんあるんですが、1ヶずつイラスト化していこう、という趣旨です。

 今日はまず「虎子石(とらこいし、とら“ご”いし、とも)」です。
 奇妙な生物。
 妖怪なのか違うのか。
 まぁ私にはわからないんですけど、個人的にこれまで当ブログにおいて「妖怪ストーンズ」というラブリーな石造りの妖怪っぽい子たちの集団を描いているので、加入させようかなというワケです。勝手に。

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 太田美術館という浮世絵を専門に扱う美術館が東京の原宿にあります。

 実は私、イラストを専門学校で学んでいた際に割と浮世絵に傾倒しまして。
 画集を何冊か買ったりしてね。
 自分で電子化しちゃいましたからもう実体はありませんけど。

 太田美術館にも何度か足を運びました。
 年齢的に私がハタチになるかならないかのコロですよ。
 原宿のにぎやかなあたりに位置しているんですが、ちょっと奥まっていて、建物の中に入ると、静かに絵と対面できる場でした。

 夏季セミナーにも参加して何回かお話を聞きに行ったりしました。
 34年前なんですね。
 相当な昔。
 頭髪としてはモヒカン・スタイルでした。ソフトモヒカンみたいに言いワケが効くタイプじゃなくて本気のヤツですよ。まだ世にソフトモヒカンっていう概念が出る以前の話ですんで仕方ないんですけど。

 本当は大学生が対象だったのに身分をイツワリましてね。
 ほめられたコトじゃないですけど、まぁいまだに浮世絵は好きですし、許してもらおうかなって思っているワケですが。

 その美術館がネットのSNS上で発信する際のアバターとして、この「虎子石」ちゃんを使用しているようで、それを見て私はその存在を知りました。

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 そもそも「虎子石」とは何なのか?

 くわしくは各自で調べてもらうのが一番なんですが、中には「メンドくさい」っていうズボラな方もおられるかもしれない。

 であればココは、せんえつながらこの私がザックリとしたところを、かなり私なりにお伝えしようかと思います。

 ココで聞いたコトをペラペラと他の人にしゃべったりしたら「間違ってますよ」って言われるかもしれない。
 その危険性はある。

 その辺、加味して聞いてもらおうかと思います。

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 まずね。「曽我物語」っていう物語。
 これに「虎御前(トラごぜん)」っていう若い娘さんが出てくるんですよ。

 「曽我物語」は、日本3大・アダうち物語のひとつって言われております。
 こっちの物語のスジについてはオイオイ触れていこうかなって思うんですけど、まずはトラ御前ですよね。

 この若い女性が物語にカラむことで、物語に陰影がグッと増しまして、ムカシの日本のヒトたちのハートを掴んだみたいです。
 ハートを狙い撃ち。キミのハートをおくれよ。
 バンバンバンバン!
 有馬竜之介さんですよね。
 昭和の奇盤。怪歌謡曲っていうかジーエスなんですけど。

 それはともかく鎌倉時代初期。源頼朝さんの時代です。
 このトラ御前さん。ご出身がドコなのかっていうのは、説がいろいろあるみたいで。
 ていうか各地を旅したとかとも伝えられたりして、その伝説に尾ひれが長いあるいは多いのかもしれません。

 なんかもう私が察するにですよ。「若くてキレイなおじょうさんの悲恋! 恋人と死別!」みたいな事件があると、昔の人にとっては「ホラ来た! トラ御前でしょ! 知ってんだからゲロゲーロ!」「ウチのジ・モ・トのトラ御前! それトラ御前! ワッショイ! ワッショイ!」みたくなって手に負えないイキオイが…。
 つきがちだったんじゃないのか。まぁ私が言ってるだけですけど。

 当時も思うにやっぱり各地にミニ梨元勝さんみたいなヒトがいて、おもしろおかしく話しを膨らませちゃって、ミニミニ「独占!女の60分!」みたいな感じでやってるうちに虚実がないマゼ、実像からかなり浮いちゃったりなんかして結果的には石碑の建立に至るみたいなね。

 冷静に考えれば曽我物語の神奈川西部から静岡東部のあたりとウチとじゃ相当に距離がねーかみたいに思った時にはもう後の祭りなんですね。世の中そうしたものなのか。ンまぁ人魔のサガなんて風にも言いますが。

 戻しますけど、トラ御前にまつわる歴史旧跡には“石”が多いようです。
 別にトラ御前氏に限らないのかしれませんけど。点在している。石関係。

 マそんなワケでして、「虎子石」ちゃんなんですよね。
 本日のブログ用イラストに描いた通りなんですが。

 これは浮世絵に描かれた想像上のモチーフであって、歌川芳員(うたがわよしかず)さんの手によるものです。
 芳員さんしか描いてない、彼のオリジナル・キャラクターであるらしいんですけど。

 要するに、「動物のカタチっぽい“石”」に「トラっぽい手足をつけちゃった」みたいなね。なかなか愛くるしい描かれ方をしています。元の浮世絵の方もね。

 歌川芳員さんとはダレか。江戸の末期から明治の時代まで活躍した絵師であるそうで、かなり最近の方ですね。
 手がけた絵を見ると、もう当たり前のように洋画からの知識も使いこなし、和洋折衷っていうんですかね。イイトコ取りでご自分の世界創造に役立てている。
 さらに言うとモダンなグラフィックセンスですね。平面構成におけるコントラスト。今に至るまで通じる原理原則。大胆にして繊細っていうか。
 それとやっぱりユーモアというか人なつっこい部分。これも相当にお持ちだったようです。総じて優秀な方ですね。大衆芸術における。

 で、“石”本体のあり方についても申し上げようと思うんですが。
 伝説としては、子宝祈願のためにお寺を訪れたトラ御前のご両親が、石を授けられたと。
 やがて女の子が産まれたが、その成長とともに、石の方も大きくなったという伝えられ方もあるようです。大丈夫なのかっていう感想を禁じ得ない。あるワキャないよっていうんですけどね。

 場所としては東海道五十三次の大磯の宿。そのあたりでの出来事だと。
 マそんな感じです。

 これ以上の説明を追うと「曽我物語」の本スジに入り込む必要が出てくるんですが、当ブログとしては、これから数日に分けて「虎子石」ちゃんの生態というか、いろんな角度から見たイラスト等を掲載していこうと。
 そんな意向を持っています。

 つまり言外には「4~5日あとから曽我物語っぽいイラスト連作も始まるよ」みたいなコトも申し上げてるワケです。
 時間に都合がつくんであればお付き合い願いたいと。カヨーな次第ですね。