セキセイインコ帝国〔23〕

 羽を休めているようなインコさんのイラストです。

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 きのうの夜に知ったんですが、ムーンライダーズというバンドでキーボードをお弾きになっていた岡田徹さんが亡くなられたそうで。

 近年はお体の調子があまり良くなかったそうですね。知りませんでした。

 岡田さんはご自身より若い世代の人たちとの交流にも積極的で、ガジェット系テクノポップな感じのバンドであるCTO LAB.(シーティーオー・ラボ)とかの活動などにあらわれていたと思います。ボコーダーはけっこうお好きだったんだなとか。

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 ムーンライダーズ自体がテクノロジーの導入には積極的だったのかなとも思います。

 もう今ではあまり知る人もいなくなっているかもしれませんがスゴい機材である「オーディオ・フレーム」とかね。サンプル・セルとかの後でちょろっと出てきた。あれももしかしたら主体的に触っていたのは岡田さんだったのかな、なんて想像をしたりします。

 古くはローランドのMC-4の導入であるとか。鈴木慶一さんが昔を振り返って「なかなか音が出なくてスタジオから人がひとり減りふたり減りしたのだがオレは最後までいてあげた。挙句「音が出たよお……」と泣きそうな表情で岡田くんが」みたいな述懐だったでしょうか。ポップス界におけるテクノロジー導入の黎明期ですよね。コンピューターとの出会いって申しますか。

 最近にラジオで俳優の六角精児さんと落語家の春風亭昇太さんがグループサウンズみたいなバンドを仕立てあげて楽曲制作した時のプロデュースが岡田さんだったというお話を聞いたばかりでした。別に私は岡田さんのご性格まで把握しているわけではないですが「いかにも岡田さんなら楽しんでやってくれそう」「架空バンドの録音セッション」みたいなことを思いました。ただしムーンライダーズって才人ぞろいでギタリストの白井良明さんでもよかったのかなという気もするんですが。

 岡田さんに戻しますが、プロデュースの他にもミキシングも得意だったんだと思います。パール兄弟のアルバムとか。もうかなり以前にネットの動画サイトで岡田さんを招いてサエキけんぞうさんと窪田晴男さんが鼎談されているのを見たときにも確かミキシングの極意なんかを岡田さんの口から出るのを聞いた覚えがあります。

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 私はほんのたまにですが趣味で音楽を作るときがありまして、「さぁいよいよミキシングだ」というときに必ず頭をよぎる言葉があります。

 実はそれが岡田さんのお言葉でして。ちょっと書きますね。今から。

 かなり昔の雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」だったと思いますけど、岡田さんが「ミキシングをカタマリで行うといいよ」みたいなことをおっしゃっていたんですね。「僕はそれを「ツー・バイ・フォー」手法と名付けている」みたいなお話だったと思います。

 具体的に申しますと、各声部のパート。機能、役割であったりをまとめて扱うという感じです。

 たとえばコーラスであったらまずコーラスが五本あるとしてそれぞれを整える。ココじゃと思ったらもうそれには触れない方針を立てて他の部位を見ていく。最後に全部の音を鳴らすんだけど、もうすでに個々のバランスはできているんで迷いが少ないよというような簡潔にして素人の人にも伝わりやすいアドバイスでした。

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 以前に当ブログで私が楽曲制作する際には「さて録音するか」ってなった段において必ずシンセサイザー・プログラマーである松武秀樹さんが頭の中に現れて「その音色プログラム大丈夫? パラメーターであったり曲へのなじみ、引き出したいリスナーへの心理的効果が意図にあっているかを最終的に確認するなら今だよぉー」みたいなウザいアドバイスを強要してくる。シブシブそれに従うっていうお話をしたんですけど、私の頭の中では松武さんが帰った後に入れ替わりで岡田徹さんがやってくるんですね。

 岡田さんの言葉というのは私のようなイラストレーターにも伝わりやすいものがあって、「ツー・バイ・フォー」って住宅建設の際に用いられる言葉ですが、それを発展させて、この曲は真ん中に主屋があって低い音域と高い音域がタワーになってる感じであるとか、そんな感じに頭の中で音像の構図を思い浮かべながら作業したりします。

 一番よくやるのはネットの動画サイトから録音した誰もあえて聞きたがらないような細かいシンセポップをイコライジングして自分好みに仕上げる時ですね。やっぱり言葉にできるイメージ、絵に描けるくらいのイメージがありますと比較的早くに意図に沿う結果が出せるような気がしています。もちろん私の素人的な作業の中においてですが。

 ですんで実は私は、頭の中では定期的に岡田さんの声を聞いております。「ツー・バイ・フォー」っていう、ただそれだけですけどね。

 岡田さんの実像を知らない私ですが、面白くて優しい人だったんじゃないかと思っています。

 故人のご冥福を祈ります。

 このところミュージシャンの訃報が続いておりまして大変に寂しいですね。