P.K.ディック『タイタンのゲーム・プレーヤー』再読いたしました。

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 まずは仕事日記。引き続き『副読本イラスト・訂正』を進めております。
 以前の日記で、この仕事については見切り発車もはなはだし過ぎる進行をしてしまったと書いたのですが、特に不安だったイラスト1点について、かなり詳細な訂正が入ってきました。現在、それに着手しています。結局2度手間になってしまった部分が多いかな…という気もしますが、良い方に作用した部分もあると思います。とりあえず楽しく作業を進めていると言った状態。

 『タイタンのゲーム・プレーヤー』を再読しました。3日くらいかけて読みました。
 ちなみに本日のイラストは、このお話に出て来る、稀覯(きこう)レコード店主のジョー・シリングその人です。(”稀覯”って”珍しい”というような意味です。)
 ジョー・シリングは、このお話の主人公ではありませんが、全体に渡って出てくる印象深い人物。
 このお話を、私は少なくとも過去に2度は読み返していると思うのですが、ほとんどの筋を覚えていませんでした。単に私の忘れっぽさが原因とも思えません。ちょっとこのお話は忙しすぎます。前後の脈絡が弱いというか、あまりにもヒドい筋の跳躍が多いと思います。ディックにその手のお話は多いですが、まぁこのお話は凄いと思います。一応、オチは着きますのでひと安心と言った所。しかしどう考えてもつじつまが合わない部分は放ったらかしのようで…。結局、ディックおじさんのホラ話の語り口を楽しんだなぁという印象でしょうか。
 このメチャクチャなお話の中で、私が現在に至るまで覚えていたのが、イラストにしたジョー・シリングという訳です。ディックは若い頃にレコード店で働いていた事もあり、音楽への愛情は強い物があったようです。ひょっとすると、ジョーのモデルになった実在の人物が居たのではないでしょうか。中古盤屋に通うディックの姿、私にとっては容易に想像できる物ですが、しかし完全に私の妄想ですので、正確な所は分かりません。ちなみに、今回のジョーの絵は完全に私の想像図ですので、あしからず。
 ジョー・シリングが乗っている車も面白いので、一応、描き込んでみました。このお話は未来の設定ですが、人が使うありとあらゆる機械が、しゃべるという機能を備えています。ポットやナベのような簡単な器具はそれなりの事しか話しませんが、車ほどになるとハッキリとした人格が備わるようで、ジョーなどは毎回、車とケンカをしながら移動をします。ジョーの車は性格が悪いのです。
 そのやりとりは楽しく、この混乱したお話をつなげる一里塚のような風景を添えていると感じました。